年金分割は請求ありきの制度

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年金分割は請求ありきの制度

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年金分割は離婚で自動的にはされず、夫婦の一方から請求がなければ行われない制度であるため、大抵は年金の受け取りが少ない側が請求します。
一方が増えれば他方が減るので、減るほうが請求して増やしてあげるような夫婦なら、離婚していないからです。

そもそも年金分割の制度そのものについて認知度が非常に低く、年金が分割できることすら知らない人がほとんどで、離婚全体の10%にも満たないと言われています。
さらに、年金分割には2種類あり、合意によって行われる合意分割と、合意なく行える3号分割があります。
ただでさえ、離婚時には金銭的なトラブルが多いことから、合意が必要な年金分割を避けて、早く関係を断ち切ってしまいたいという背景もあるでしょう。

もう1つの要因は、専業主婦から共稼ぎへとシフトし、妻側も厚生年金や共済年金を受け取れる割合が高くなっていることです。
離婚率の高まりと共に、婚姻期間が短くなっていることもあり、面倒な年金分割が敬遠されているのかもしれません。
年金の増減額は、一般に婚姻期間が長くなるほど大きくなるため、いわゆる熟年離婚において利用率が高い制度です。

なお、年金分割の請求権は、原則的に離婚後2年で消滅します。
したがって、あなたの年金が分割されそうなときは、年金分割の話を切り出さず、2年の時効を待つという手もあり得ます。

知られずに時効を待つ場合、協議離婚でなければ難しいかもしれません。
それは、離婚調停の申立書や離婚裁判の訴状として家庭裁判所が提供している書式に、年金分割についての記載があるためです。

妻に年金についての知識がなければ、調停や裁判に進む段階で初めて年金分割という制度を知り、あなたの年金納付記録を自分の納付記録にできるという仕組みを理解します。
そうなってからは、年金分割の請求を免れないため、知られないためには協議離婚になってしまうのです。

こうした側面があることから、協議離婚時に慰謝料や財産分与の請求があった場合、年金分割の話が出なければトータルで考えて、負担の少ないほうを選ぶ方法もあります。
ただし、あえて年金分割の話を出さずに、妻が離婚後に請求する作戦であれば、引っ掛かってしまうかもしれません。

他には、年金分割で合意することを理由に、慰謝料や財産分与を少なくするという交渉もできるでしょう。
年金分割は納付記録の分割であるため、将来少なくなっても、離婚時に持ち出しとなる金銭ではありません。